^_^こんにちは!□ましゅまろ□です!
今回は、過去に経験した、かなしい経験についてお話ししたいと思います。
いのちは助かりましたが、後遺症につながってしまった赤ちゃんの話です。
細菌性髄膜炎のあかちゃんでしたが、本当にむずかしい感染症で治療がスムーズにいっても助からない子がいるんだ、と思った経験です。
受診前に、別の病院で入院していたにもかかわらず大事な検査がうけられてなかった子でした。
そのまま書くと個人情報にかかわるので、いくつか改変して、治療の難しさ・検査の重要性というのは伝わるようにしたいと思います。
ちょっと重たいお話になります💦

Contents
イヤな予感しかしない紹介患者
「今から紹介患者さんが来ます。生後20日の発熱で、顔色が悪くて吐いています」
小児科医からすると、最悪のフレーズばっかりの紹介です。
新生児+熱、イヤです。
結果的にカゼということも多いですが、結果論です。
重症という感じしかしません。
そして、顔色が悪くて吐いている、です。
髄膜炎のように、脳になにかあるような病気では吐くことがあります。
顔色が悪いというあたりが重症かもしれない、ということ思わせます。
見たしゅんかんからヤバイ空気しかしなかった
赤ちゃんの顔は、ふつうはピンクっぽい顔色をしていますが、紹介されてきた子はすこし黒みがかった顔色でした。
専門的には末梢循環不全の状態、つまり重症のときに血のめぐりが悪くなる現象だったのです。
しかも、うー、うー、とうなっています。こちらは専門用語で呻吟といいます。
「これ、ぜったいにアカンやつ!」
この赤ちゃんは危ない状況にある!、とスタッフみんなが気づきました。
お母さんに急がないといけないことを説明し、すぐに点滴などの処置を開始。
重症な子は、血のめぐりが悪くなっているので、点滴もなかなか難しい。
そして、点滴の針をさしても泣かない→痛みに反応できないぐらいしんどい、ということを意味しています。
生後間もない子は、何がおこっているか分かりません。
検査をフルコースで行い、背中から針をさして髄液をとる検査も行いました。
その髄液の検査結果は、、、
髄液検査の結果は細菌性髄膜炎うたがい
髄液検査の結果からは、超重症の細菌性髄膜炎をうたがせる結果でした。
ほぼ、確定といっていい結果でした。
治療は抗生剤治療で、1分でも早くはじめる必要があります。
この子は、最初からあやしいとおもっていたので検査結果が出る前にすでに治療をはじめていました。
治療の開始タイミングとしては、むしろ早くできたと思っています。
しかし、ここからが大変です。
ちゃんとした抗生剤を、手早くできたとしても、治療効果よりも菌の増殖のほうが早ければ赤ちゃんは負けてしまいます。
やるべきことはすべてやったので、あとは「うまく効いてくれ!」と、いのることしかできません、、、、
別の病院で入院していたが検査はなかった
あわただしく検査が終了し、お話しする時間ができたので、ご家族に話を聞きました。
すると、うちの病院にくる3日前に別の病院を退院したばかりだというのです。
お母さんの話では、抗生剤治療は受けていたということですが、、、
血液検査と尿検査はあったそうですが、「培養検査」と「髄液検査」がなかったそうです。
「培養検査」とは、変な菌がいるかどうかを調べる検査です。
とくに新生児であれば症状がわかりにくいので、入院が必要な子に対しては、検査で菌がいるかどうかを調べるのは小児科医の基本です。
培養検査をしておけば、もし最初に診断がつかないような感染症であったとしても、あとから培養の結果が判明することで感染症の見逃しをふせぐことができます。
いくらカゼと思っていても、まさかはありうる、ですし、新生児にまさかがあったら命にかかわります。
カゼと思っても培養をとるのは小児科医のキホンとたたきこまれるはずなのですが、、、
「髄液検査」は生後3ヵ月より後はしないケースもけっこうありますが、生後3ヵ月未満、とくに生後1ヵ月なら、やらない選択肢はないと研修医時代に教えられました。
そんな大事な検査も受けられず、問題ないだろうと退院されての3日後の受診であったのです。
今回の検査と治療はスムーズにはじめれたが、、、
実は、だいたいこれに近い経過のばあいには、この菌だろう、というのは小児科医だと予想がつくのですが、本当にイヤな菌なんです。
この子の場合、いろいろ検査してましたがスタッフの対応もスムーズだったので来院後40分ぐらいに治療開始できました。
(ふつうはカルテつくるのに10~15分、問診票書くのに5分ぐらい、待ち時間が混んでなければ診察まで5~15分、ふつうの検査だけで1時間ぐらい、結果説明に15分ぐらい、してから治療開始とスムーズにいって2時間以上かかります)
つまり、かなりはやいペースで治療を開始することができましたが、、、
入院した数時間後に、呼吸停止を起こしてしまうことになります。
あまりにも病気の進行がはやかったのです。
原因はB群溶連菌
培養の結果は2~3日後にわかります。
結果は「B群溶連菌」
新生児の細菌性髄膜炎の原因菌のひとつです。
非常にこわい菌で、いくつかのはっしょうパターンがありますが生後2~4週間後に発生することが多い遅発型だったのです。
正しい抗生剤をてばやくいっても、病気が進行する可能性高いです。
通常、感染するところはお母さんからなのですが、産科で膣分泌物にいないかどうかをチェック受けてもらっていますが、そのチェックをすりぬけるB群溶連菌もいます。
小児科医としては常に意識して対応にあたらないといけない菌です。
脳出血もおこして後遺症に
この子の場合の経過は最悪で、呼吸がとまったのですぐさま人工呼吸を開始して呼吸状態は安定させることができました。
マンパワーの問題から、別のさらに上のレベルの病院に続きの治療をお願いすることにしました。
しかし、髄膜炎が進行すると心臓のうごきなどにも影響することがあり、転院先の病院でも脈拍が極端にあがりさがりをしました。
また、全身の状態がきわめて悪くなるので、実は脳出血まで起こしてしまったのです。
合併症にたいして治療を追加してもらったおかげで、一命はとりとめましたが、寝たきりの状態になってしまわれました。
適切に治療しても、うまくいかないことがあるのが細菌性髄膜炎のおそろしいところです。
新生児期の発熱はフルコースで調べましょう
今回のケースでは、見た目からあきらかに悪い状態でしたが、まったく重症化する気配をみせない重症患者さんがいるのが新生児期です。
新生児の診察は難しく、どうがんばっても正しく診断できない、という視点にたち、新生児の発熱に対してはしっかり検査をしていく姿勢が大事だと痛感します。
前の病院のように、何もしらべないのは論外です。
血液検査、尿検査、レントゲン、髄液検査、培養検査、新生児で発熱がおこった場合はかならず調べてもらってください。
初回の検査で異常なくても、全然よくならなければ、もう1度調べてもらってください。
そして、時間がかかっても培養の結果が、本当に問題ないか最後までちゃんと確認してもらってください!
新生児の重症感染症は絶対みのがしてはいけません。
、、、と、ちょっと重たい内容になってしまいました💦
でも、大事なことをしめす内容だと思います。
新生児期の赤ちゃんをおもちのお母さんは、熱があったら夜中でも必ず受診してくださいね!
それでは!