^_^こんにちは!□ましゅまろ□です!
小児科を受診される理由で一番多いのが「発熱」です。
発熱だけでは僕たち小児科医はびっくりしませんが、発熱+「何か」、の「何か」がとっても大事です。
10歳の子が発熱しても、元気であれば、おそらく「カゼ」でしょうから、あまり心配ありません。
ただし、年齢が小さければ小さいほど心配です。
その中でも、生後3ヵ月未満は気をつかいますし、生後1ヵ月未満はとくに緊張感をもって診察します。
元気であったとしても、生後3ヵ月未満ということが理由で、入院を強く意識します。
なぜ、そこまで気をつかう必要があるのか、について解説をしていきます!
Contents
新生児の発熱には重症感染症がある
新生児は、正確には生後1ヵ月までをいいますが、今回はひろく生後3ヵ月までをさすこととします。
新生児期は、あたりまえですが、とてもよわいです。
お母さんから免疫の成分はもらっていますが、自分で免疫の力をつくりだす力はまだまだなので重症化リスクが非常にあります。
また、体力そのものも未熟ですので、あっという間に体力がけずられてしまいます。
新生児はいろいろな意味で感染にはよわいんです。
いくつか、特に注意すべき感染症があるので解説していきます。
重症化するカゼウイルス「RSウイルス」
RSウイルス(アールエスウイルス)はカゼのウイルスです。
大人もかかることはありますが、ハナミズたれて少し咳をしておわり、というぐらいのものです。
小さい子がかかると、一部の子は重症化します。
肺炎にかかったり、細気管支炎という呼吸不全のような状態になります。
年齢が小さければ小さいほど重症化しやすいです。
過去に、僕自身が小児科医としてみた子で、人工呼吸が必要になったのはすべて3ヵ月未満で、多くは1ヵ月前後までの子でした。
ハナミズがわずかにでているだけなら調べないかもしれませんが、熱+ハナミズ+セキ、の3ヵ月未満なら必ずRSウイルスを調べます。
けっこう多い「尿路感染症」
尿路とは、おしっこの通り道のことを言うので、腎臓、膀胱などを含む臓器をいいます。
特に、発熱を起こすのは腎臓の感染症なので、実質、「腎盂腎炎(じんうじんえん)」のことをさします。
腎臓は、血液がたくさん流れる臓器なので、腎臓に感染症を起こすと、腎臓に通っている血液にバイ菌がのってしまうと全身にバイ菌がとんでしまうというおそろしいことが起こります。
しかも、尿路感染症はセキもハナミズも出ず、腹痛や背中の痛みがでることはありますが新生児ではわからないので、熱いがいの症状がない、というのが診断の難しさです。
おしっこの検査をすれば分かるのですが、生後3ヵ月未満の子が自分でトイレにいって、おしっこをとってくれるわけがないので、そこにも大変さがあります。
ただし、正確に診断しておかないと治療にさしつかえるので、カテーテルというおしっこの通り道にいれる細い管をつかっておしっこをとることもあります。
いちばんコワイ「細菌性髄膜炎」
細菌性髄膜炎かどうかというのは、かならず考えないといけません。
今は治療成績が良くなってきていますが、ひとむかし前は細菌性髄膜炎になった赤ちゃんは
1/3が、いのちを落とし
1/3が、後遺症をのこし
1/3が、なんとか助かる
そんな恐ろしい感染症だと、先輩から教えられたものでした。
しかも、1分でも治療が早くいけるかどうかが、助かるかどうかを決めるというぐらい緊急性が高いです。
これもひとむかし前、それぐらい細菌性髄膜炎はこわかったので、生後3ヵ月未満が熱をだしたら全員髄液検査、という時代もありました。
じつは、細菌性髄膜炎のいくつかは予防接種で防げるようになってきたということもあり、全員に髄液検査、というほどではなくなってきています。
肺炎球菌ワクチンと、ヒブワクチンがそれにあたります。
ただし、このワクチンは生後2ヵ月以降からうてるものであり、生後1ヵ月未満では、肺炎球菌やヒブ以外のバイ菌による髄膜炎もあります。
ですので、個人的意見もはいりますが、生後2ヵ月未満は髄液検査はほぼ必須で、生後2ヵ月以上でもワクチンをうっており髄膜炎以外の原因がはっきりして他の検査結果がすべて良好、という時以外は髄液検査をすべきと考えます。
どんな検査をするの?
では、新生児の発熱の時にはどんな検査をするのでしょうか?
血液検査
まずは血液検査です。
血液検査でみたいことは、炎症反応(白血球とCRP)です。
その熱の原因が感染症であった場合にウイルスの感染症(いわゆるカゼ)なのか、重症化の可能性があるバイ菌による感染かどうかのおおまかな区別に使えます。
もし、炎症反応の数値がものすごく高い、もしくは超重症感染症のばあいは白血球がむしろ下がる、このような状況があれば原因を追究していく必要があります。
レントゲン検査
肺炎かどうかを確認します。
新生児でも肺炎になる方はあります。
尿検査
尿路感染症がないかどうかをみます。
ちゃんととるためにはカテーテルという細い管を使います。
培養検査
変な菌がいてないかどうかを調べる検査です。
血液や尿、髄液などをつかって、ばい菌を生やしてみて、生えてくるかどうかをみます。
バイ菌が育つまでは2~3日かかります。
迅速検査
他にするのは迅速検査とよばれるもので、約15分ぐらいでウイルスなどが分かるものです。
インフルエンザが有名ですが、他に調べられるものはRSウイルス(アールエスウイルス)、ヒトメタニューモウイルス、アデノウイルス、溶連菌です。
15分ぐらいで原因がわかるので、新生児の発熱のように原因をできるかぎりはっきりさせておきたい場合には、手当たり次第でも調べておきます。
逆に、これらで何も原因がわからなければ、髄液検査まで含めておこなったほうがいいかもしれない、という発想になります。
髄液検査
いちばん重症の細菌性髄膜炎をしらべるのに大事な検査です。
背中から針をさすので、こわい検査と思う方もおおいと思います。
僕たちも不要なお子さんであればさけますが、細菌性髄膜炎をみのがすほうが怖いのであやしい!と思ったらかならず検査を行います。
針をさす場所で、ここが安全というのは医者の基本ですので、まず問題なく検査ができます。
ただし、うまく髄液がとれないお子さんもあるので、何度やってもうまくとれない場合は途中で検査を中断することもあります。
正常の髄液であれば透明です。(新生児の場合は少しきいろっぽい色のこともあります)
明らかな異常であれば、本来透明の髄液が白くにごっています。
髄液がにごっている(もしくはにごっているかどうか自信もって判断できない)という状況であれば、すぐさま抗生剤治療をはじめなければいけません。
どんな治療をするの?
はっきりとした原因がわからなければ、これもすこし個人的意見がまざりますが、変なばい菌がいないかどうかの最終結果がでるまでは抗生剤投与を考えます。
その場でできるすべての検査を行っても、原因が分からないということがあります。
また、カゼの場合は、その場で確定させる検査がないので、結果がすべて問題なく、重症化しなかったということをふまえて、退院の時にふりかえってカゼと最終診断することになります。
完全に治るまでは、カゼだ!と思っても、「もしかしたら見逃している重症感染症があるかもしれない」という視点で注意する必要があります。
髄液や血液の中にバイ菌がいないかどうかの、培養の検査の結果を待ちます。
過去に、血液検査などがすべて正常で、経過もよくカゼと誰もがおもっていた新生児で、あとから検査結果で全身にバイ菌がまわっていたということが分かった子がいました。
その子は、治療自体はおこなっていたので、問題なく経過しましたがカゼと思って治療をやめていたら危なかったです。
抗生剤は乱用しない、というのは大事である一方、新生児の発熱のように重症化の可能性が高い場合は積極的に使っていく必要があると考えます。
見逃すと「いのち」に関わります
見逃すと「いのち」にかかわります。
見逃さなくても、脳出血などにつながったおそろしい感染症にかかっていた赤ちゃんもいます。
もちろん、新生児の発熱といってもほとんどはカゼで終わるのですが、重症な感染症を見逃さないというのは小児科医としてとても大事な仕事のひとつと考えています。
かならず、しっかりとみてもらってください。
まとめ:新生児の発熱は夜でも受診を
新生児の発熱は、緊急の状態です。
夜中でも受診が必要です。
すぐに家を出れない事情があっても、救急車を呼んででも受診してください。
それだけ、僕たち小児科医は気をつかって診療しています。
ちょっと重ための話もふくまれる記事になりました💦
今回の記事が参考になれば幸いです!
それでは!
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